笹島雅彦のブログ

ジャーナリスト・跡見学園女子大学教授の笹島雅彦のブログです。専門は国際関係論・安全保障・アメリカ外交。

サバティカル終了。2022年度春学期から授業再開。

 2021年度は、大学からサバティカル(研究休暇)をいただき、東京大学大学院法学政治学研究科の客員研究員として1年間を過ごしました。コロナ禍のため、海外へ出かける機会がなく、残念な面もありましたが、早朝、深夜にオンラインによる国際会議に多数、参加することができ、かえって時差の壁がない充実した時間を過ごすことができました。

 

 この間、アフガニスタンのカブール陥落や米中対立の激化、ロシアによるウクライナ侵攻など世界の激動を観察してきました。それぞれの分析については、新学期以降、授業の中でご紹介していきたいと思います。

 

サバティカル終了。2022年度春学期から授業再開。

 2021年度は、大学からサバティカル(研究休暇)をいただき、東京大学大学院法学政治学研究科の客員研究員として1年間を過ごしました。コロナ禍のため、海外へ出かける機会がなく、残念な面もありましたが、早朝、深夜にオンラインによる国際会議に多数、参加することができ、かえって時差の壁がない充実した時間を過ごすことができました。

 

 この間、アフガニスタンのカブール陥落や米中対立の激化、ロシアによるウクライナ侵攻など世界の激動を観察してきました。それぞれの分析については、新学期以降、授業の中でご紹介していきたいと思います。

 

就活に役立つこともあるゼミ活動

 ある日の午前中、ゼミの時間。

ゼミ生の一人がリクルートスーツに身を包んで教室に現れた。

「きょうはどうしたの」

「午後から志望会社の面接があるのです」

「ふーん、がんばってね」

といった他愛ない会話で始まったその日のゼミは、これからスタートするトランプ政権の内政や外交政策をめぐって、その問題点を突っ込んで議論した。今から3年半前のことだ。

 

 その日の午後、学生は外資系IT企業の面接に臨んだ。居並ぶ面接者たちを前に、大学のゼミで国際関係論を学んでいることを話したところ、「それじゃあ、キミ、トランプ大統領についてどう思う?」と聞かれた。学生は、午前中のゼミでの議論を思い出しながら、立て板に水のごとく、自分の考えを述べることができた。面接者のうなずく顔を見て、手ごたえを感じたという。その日の夜、「内々定」の電話連絡を受けた。

 

 その翌週、喜びの報告を受けた。ゼミで学んだことが、こんなにストレートに活きることもあるのか、と驚いた。そのIT企業の社長とは後日、記者会見の席で知り合い、その学生のことを「よろしく」と念押しした。

 

 国際関係を学んだゼミ生たちは、電話会社系ソフト開発企業のエンジニアや大手生命保険会社(総合職)、市役所職員、自動車販売会社などに就職していった。今年は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業によっては、採用枠に大幅な変更があるところもあり、学生たちは苦戦しているようだ。世界を飛び回ることを夢見て、航空会社を希望していた学生は、今年、「採用中止」となってしまい、全く別の業界へ転進を余儀なくされている。一方、不動産会社から内々定を得た学生も複数いる。

 

 今年は採用面接もオンラインで進められている企業が多く、学生たちも対応に追われている。逆境にめげず、志望する会社目指して奮闘して欲しい。

 

 

 

トランプ政権誕生1か月

 アメリカのトランプ大統領が就任して1か月が経ちました。

世界中が不安な面持ちでこの新政権の行方を凝視しています。私たちのゼミでは、昨年11月の米大統領選の結果が判明して以降、トランプ大統領が当選した勝因は何か、ヒラリー・クリントン氏の敗因は何だったのか。そして、新政権の政策はどのようなものかを探り、討論を重ねています。

 この政権からは、目が離せませんね。

 

書評合戦「ビブリオバトル」で盛り上がる

 書評合戦「ビブリオバトル」をご存知でしょうか。

 最近、人が集まってお互いに好きな本の書評を語り、聞き手の興味を引いた度合いを競うというこのイベントに注目が集まっています。2010年には、大学生を対象とした「首都決戦」が始まり、2013年からは高校生大会も開かれています。今年1月の高校生大会には、636校が参加するなど、予選参加校も急増しているようです。

 

 これは、学者や出版社、書店代表者らから成る「活字文化推進会議」と紀伊国屋書店がタイアップし、読書の「甲子園」として地方予選と全国大会が運営されており、すそ野が拡大しています。そこで、私たちのゼミでは、夏休みの読書体験に基づいて、それぞれの学生が読んだ本の良さを口頭でアピールするビブリオバトル大会を体験してみました。

 

 学生たちが選んだ本は、国際関係論のゼミらしく、池内恵著「イスラーム国の衝撃」(文春新書)や、渡辺靖著「アメリカのジレンマ」(NHK出版新書)、同著「アメリカン・デモクラシーの逆説」(岩波新書)などが取り上げられました。

 

 また、女性の視点を重視し、シェリル・サンドバーグ著「LEAN IN 女性・仕事・リーダーへの意欲」(日本経済新聞出版社)、渡辺和子著「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎)などを選んで、熱く語る学生たちもいました。

 

 この競技は、もともと、京都大学の有志の勉強会で、一緒に読む本を選ぶために始まったそうです。最初は、研究室内で楽しまれる会合だったものが、やがて広がっていったわけです。来年には、ゼミ生の中から首都圏の予選大会に応募する人が現れるといいな、と期待しています。

 

 

米海軍横須賀基地見学

 この夏休みを利用して、ゼミ生たちは、在日米海軍横須賀基地を見学しました。日米同盟が実際のオペレーションでどのように運用されているかを現場で確認することが狙いです。

 

 ゼミ生たちは、基地内に停泊していた米海軍駆逐艦「カーティス・ウイルバー」に乗船し、艦内をくまなく観察。乗組員たちと会話したり、水兵と写真に納まったりすることができました。また、同時に展示されていた海上自衛隊掃海艦「えのしま」にも乗船し、幹部から機雷を掃海する実際の方法について学びました。それぞれの艦内において、乗組員から装備の機能について概要の説明を受けることができたことは、有意義なことです。

 

 同基地内では、ちょうど帰港していた原子力空母「ロナルド・レーガン」も近くで観察することができました。ゼミ生たちにとって、米海軍艦船を見るのは初めてのこと。威容を誇る空母の姿に、ただ見つめるばかりです。第七艦隊所属の空母機動部隊は、南シナ海で「航行の自由」作戦を展開し、ハワイ沖の環太平洋合同演習(リムパック)に参加してきたばかりです。

 

 横須賀基地では、ちょうど各艦の修繕工事を行っており、乗組員たちは、久々に家族と再会し、骨休めしているところでした。原子力空母「ロナルド・レーガン」など空母機動部隊にとって、横須賀基地が「事実上の母港」と呼ばれるのは、その軍人家族が横須賀近辺に居住し、太平洋軍司令部の置かれているハワイではなく、前進基地・横須賀が帰港、発進の場になっているからです。米海軍の各艦船は、休養ー訓練ー作戦任務のローテーションを繰り返しながら任務を遂行しています。

 

 日米同盟は、冷戦時代から実態は「海軍同盟」だと、専門家の間で見なされてきました。米海軍と海上自衛隊の共同訓練の中身が濃く、実際のオペレーションでの協力関係が3自衛隊の中で、最も進んでいるからです。その中で、横須賀基地は、米海軍の前方展開にとって、最重要の要といえます。横須賀基地は、厚木航空基地や相模補給廠など神奈川県内周辺の各基地と連携し、有事の際、米軍の集結・出撃基地としての高い即応能力を持っているからです。

 

 横須賀基地は、水深が深く、天然の良港です。戦前は旧日本海軍の基地として利用されていました。日本は、第二次世界大戦前から自力で戦艦を建造してきたアジア唯一の国であり、その高い技術力は現代の造船技術にも生かされてきました。横須賀基地には、艦艇の修理施設があり、日本人従業員も高い技術力を生かして整備・修理を行っています。米国のアジア太平洋戦略にとって、横須賀基地は、決して手放すことのできない要といえるでしょう。

 

トランプチームとヒラリーチーム

 米大統領選は7月、全国党大会の季節を迎え、いよいよ本格化してきました。

 

 私たちのゼミでは今年度、米大統領選プロジェクトを立ち上げ、1年間にわたって米大統領選と新政権への移行期を見守ることにしました。

 

 3年生のゼミ生を2班に分け、当初、共和党チームと、民主党チームでスタート。両党の予備選の様子をフォローしました。両党の大統領選候補者がドナルド・トランプ(共和党)とヒラリー・クリントン民主党)に絞られると、それぞれ、「トランプチーム」と「ヒラリーチーム」に名称を変更、両陣営の動向を探ることにしました。

 

 今回の大統領選は、全く、異例づくめです。共和党側では、党内主流派の有力候補者が次々と脱落し、共和党候補者と言えるのかどうか疑問視されるドナルド・トランプ

予想を裏切って大統領候補者に選出されました。

 

 一方、ヒラリー・クリントンは、バーニー・サンダース上院議員支持者の取り込みを図れるかどうか、メール問題をめぐる有権者からの不信感をぬぐい去ることができるかどうかが大きな注目点です。両候補ともに、TPP(環太平洋経済連携協定)批准に批判的で、米社会が自由貿易主義を受け入れているのかどうか、日本としても気になるところです。

 

 学生たちは、大統領選の勝敗だけでなく、選挙戦の底流を形作るアメリカ社会の格差問題や人種問題、人口動態に注目して調べています。