笹島雅彦のブログ

ジャーナリスト・跡見学園女子大学教授の笹島雅彦のブログです。専門は国際関係論・安全保障・アメリカ外交。

天井画を見上げて

 アメリカの大学院に留学するため、首都ワシントンにやってきました。

1986年夏のことです。

 時はレーガン政権時代。アメリカ連邦議会にほど近いキャピトル通り沿いの小さな民家に下宿しました。ここから連邦議会図書館や連邦議会議事堂までは、徒歩数分です。連邦議会議事堂は、首都の中心とみなされ、ワシントン市の東西南北の区分は、議事堂を中心に定められています。

 連邦議会図書館には、連日のように通い、ときには、観光客でにぎわう連邦議会議事堂ものぞいてみました。その真ん中にそびえる円形ドームを内側から見上げると、高さ55メートルに及ぶ初代大統領・ジョージ・ワシントンを賛美する天井画が目に飛び込んできます。ギリシャ系イタリア人画家・コンスタンティーノ・ブルミディが南北戦争時代に描いたフレスコ画です。

 この絵を見上げて、首都ワシントンにやってきたことを実感しました。この絵は、自由と勝利の女神たちに囲まれたジョージ・ワシントンを描いています。アメリカ独立戦争の指揮官であり、初代大統領であるワシントンを神格化しているわけです。私が超大国・アメリカについて学んでいこうとした第一歩でした。

 ちなみに、この連邦議会議事堂は、黒人奴隷の手によって建設されたそうです。バージニアアレクサンドリア近くのポトマック川沿いにあるジョージ・ワシントンの実家「マウント・バーノン」には、奴隷用宿舎もあります。大統領としてだけでなく、農園経営者としてのワシントンの意外な一面で、ちょっとした驚きでした。その後のアメリカ史をたどると、黒人奴隷問題は暗い影を落としていきます。

 私のウェブサイト(笹島雅彦研究室)にワシントンの天井画を掲載したのは、こんな経緯からです。